3.「ちいさな灯り」の楽曲

いよいよ、お話もクライマックス、
テムが湖の中ほどにある「こぶ島」で
ポーを見つけるシークエンスです。

 

 

この場面では最初から、無言の情感を表現しようと思っていました。
フウリのボートに乗って湖に出た所から
周囲の音はフェードアウトしていって、
意識の中で音楽だけが流れ、ポーと再会する場面でムードは最高潮に達する。
そこで目にする光景に言葉はいらない。
そんな力強いシークエンスにしたいなと考えていました。

 


「ちいさな灯り」を彩った素敵な楽曲について
この作品の音楽を担当した羽深さんに解説していただきました。

 

 

「ちいさな灯り」の音楽を制作しました羽深です。

音楽について、少しお話したいと思います。

 

「ちいさな灯り」の音楽のテーマは、
「ポーの住む世界の民謡」を作る、ということ。
民謡は口頭伝承で歌い継がれるものですから、
誰もが口ずさめるような、わかりやすい旋律でなければなりません。
主にスコットランドやスウェーデンの音楽を参考に、
様々な地域の音楽の要素を使用しながら
「ポーの住む世界の民謡」を制作しました。

 

しかし、ただ分かりやすいだけではつまらないので、
少し音楽に詳しい方でも楽しめるように、
これらの曲には様々な仕掛けを施しています。

「ソラシーレーシラソー…」で始まり、
「…ソシラーソシラーソラソー」で終わる物語の主旋律。
この主旋律から抜粋した音型やリズムを、全曲の至る所に散りばめました。
ほぼこの主旋律だけで全曲成り立っています。
もちろん、伴奏を担当している楽器の動きにも沢山使用しています。
ぜひ、じっくりと聴いてみて下さい。
ここでこの旋律見つけたよ!なんて報告を、お待ちしております。

 

「ちいさな灯り」は、アニメーション、音楽、効果音、
三つの要素を対等に捉えた、音とアニメーションの作品です。
アニメーションの音は、単なるアニメーションの「補強」と思われがち。
音にその役目しか与えないアニメーションが多いのも事実です。
もっと音が前面に出た作品を作りたい、
音の良さを最大限に生かした作品を作りたい。
そういう思いからこの作品は生まれました。
音の重要性を理解し、企画段階から関わらせて下さった大桃監督に、
この場を借りて、心から感謝致します。

 

既に作品をご覧になった方はお気づきかもしれませんが、
今回の音楽は生演奏を録音しています。
自然に包まれ、キャラクターの息づかいが聴こえてくるような、
壮大な世界観のこの作品に合うよう、

生音だけで音楽を作ろうと決意しました。
大編成は難しいと分かっていながら協力を仰ぎ、
沢山の人に助けて頂いて、約40人もの奏者の素晴らしい演奏と、
録音を実現することが出来ました。

 

これだけ贅沢な録音になったということもあって、
今回はDVD・Blu-Ray映像特典として、
サウンドトラックも作らせて頂きました。
インターネットでも配信しています。
http://soundcloud.com/yhweb/sets/tiny-light-original-soundtrack
映像と合わせてサウンドトラックも聴いて頂けたら、とても嬉しいです。
 
少々専門的な楽曲解説を、pdfで制作しました。
ご興味ある方はこちらも合わせてご覧下さい。

 

音楽 羽深 由理

 

 

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