4.ファンタジーからの帰り道

最後はこの作品のキーになっている「ろうそくの灯り」の意味合いについて、
少しお話ししてみようと思います。
といってもこれは作中で語っていない事なので、
僕の個人的な解釈だし、知らなくてもいいっていうようなことなのです。

 

ポー達が暮らす森の世界にはある決まりを作りました。
それはテムがろうそくを灯したときだけ
見たり触れたり出来る世界だということです。

 

 

ちょうど何も見えない真っ暗闇の中で、
ろうそくの灯りに照らされたところだけが浮かび上がって見える様に、
ポー達の存在は、照らされることで在るものなのです。
(森の中のたくさんの家々も、ろうそくの灯りが照らしていました。)

 


僕がこの作品でろうそくの灯りと不思議な森の世界を結びつけたのは、
その関係が僕の考える「空想(ファンタジー)世界」という概念を
表しているからです。
そこに在るから見えるのではなく、見るから在る世界。
それが「空想(ファンタジー)」です。


そして僕がこの作品でテーマにしていたのは
「日常の空想(ファンタジー)、空想(ファンタジー)の日常」です。
普段過ごしている現実世界のちょっと裏側には
不思議な世界があるかももしれない(と人は空想する)、
そしてその裏側の世界も時の流れと共に
日常を過ごしているんだと考えました。
だからこの作品では、特別な事件やドラマが起きるのではなく、
何気ない日常に寄り添うような

空想(ファンタジー)のお話を考えました。

 

 

テムがこぶ島のてっぺんで、
森中をろうそくの灯りが照らしているのを見る場面。
これはお祭のときにあったろうそくの灯りリレーのように、
テムとポーの灯りを森の住民達が次々とうつしていったことで、
テムとポー達の世界が大きく広がったことを示しています。

 

 

エンドロールはテムの帰り道を描いています。
今まで出会った登場人物達のもとを訪れながら
テムはファンタジーからの帰路に着きます。

 


ろうそくの灯りが消えるのがこの作品の最後のカット。
この作品はろうそくに灯りがついたときから始まり、
消えるところでおしまいなのです。

 

 

 

と、いうようなところで
作品もテキストコメンタリーも全て終了となりました。
作品の解釈について「あーだこーだ」言うのもなぁとも思いましたが、
せっかくのコメンタリーなんで書いてみました。
もちろん皆さんそれぞれの解釈で

自由に楽しんでもらったっていいんです。

 

そして更にホントに余談ですが、
この作品、というかテムとポー達の世界は
本当はもっと色んな事があったんです。
それこそ日々テムとポーは一緒に過ごして、
語られてない色んなエピソードがあった上での第四話、
そしてその後も続いていく物語。
なんですが、現実的に今作れる物量の関係で
この四話、三十分だけに絞って切り取ったものでした。
だから「白紙」の部分はもう皆さんにお任せしますから、
自由に空想を広げてもらえたらいいなぁと思います。
僕もたまにはポーを描くかもしれません。


では、長時間最後までお付き合いくださった皆さん、
本当にありがとうございました。

 

 

監督・アニメーション 大桃 洋祐

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